予防注射

混合ワクチン

混合ワクチンは、重症化しやすい複数の感染症をまとめて予防するために開発された、お守りのようなものです。
これを打っておくだけで将来の病気が予防できたり、症状が抑えられたりするので、どうぶつの命を守るために、時期に応じて接種することが必要です。

予防注射

子犬の場合は通常、約2ヶ月齢、3ヶ月齢、4ヶ月齢で1ヶ月ごとに注射を打ち、免疫力を高めます。その後は年に1回ずつの接種で抗体をキープします。
近年はワクチンガイドラインが世界的に変わってきており、年1回血液から抗体価を検査し、病気に対する抗体が高く保たれていれば、3年程度ワクチンを打たずに生活することも可能です。
ただし、ワクチンの種類や生活環境、その時の体調によっても大きく異なってくるので、診察時に獣医師にご相談ください。

犬のワクチンで予防できる病気

犬パルボウィルス感染症 (2種以上) 激しい下痢や嘔吐をおこし、食欲がなくなり、急激に衰弱します。感染犬のうんちに潜むウイルスは伝染力が強く、死亡率の非常に高い恐ろしい病気です。
犬ジステンパー (2種以上) 発熱、下痢、鼻炎、結膜炎、嘔吐や下痢を起こし、神経のマヒが起こることもあります。死亡率が高く、犬パルボウィルスと並んで非常に怖い伝染病です。
犬伝染性肝炎 (5種以上) 腹痛、下痢、嘔吐、食欲不振などがみられ、目が白く濁ることもあります。生後1年未満の子犬が感染すると、全く症状を示さずに突然死することがあります。
犬伝染性喉頭気管炎 (5種以上) 発熱、食欲不振、くしゃみ、鼻水、短く乾いた咳がみられ、肺炎を起こすこともあります。他のウイルスや細菌と混合感染することにより、症状が重くなります。
犬パラインフルエンザウイルス感染症 (5種以上) 喉や鼻水などのカゼ症状を示します。 混合感染や二次感染を起こすことで症状が重くなります。伝染力の非常に強い病気です。
犬コロナウイルス感染症(6種以上) 成犬だと軽度の胃腸炎、子犬の場合は重度の水下痢や嘔吐を引き起こします。犬パルボウイルスとの混合感染で重症化することがあります。
犬レプトスピラ感染症 (8種以上) レプトスピラという細菌が原因の伝染病で、腎臓や肝臓が侵され、腎炎や尿毒症、黄疸などの症状が起き、人にも感染する危険性がある病気です。 そして、レプトスピラは西日本に主に生息しているため、そちらに犬を連れて行かれる場合には、必ず打つ必要があります。またこの病気は感染動物の尿を介して感染するため、西日本でなくても水辺やキャンプ場、牧場等に行く予定がある場合も事前に打つ必要があります。
予防注射

子猫の場合は、通常約2ヶ月齢、3ヶ月齢で1ヶ月ごとに注射を打ち、免疫力を高めます。
その後は年1回の注射が基本ですが、心配な方には犬と同様ワクチン抗体価の血液検査が可能です。
猫の場合は特に、ワクチン接種部位肉腫という腫瘍ができることがあるので、ワクチンを打つ部位に注意が必要です。

猫のワクチンで予防できる病気

猫ウイルス性鼻気管炎 (3種) 猫ヘルペスウイルスによる感染症で、発生率が高く、激しいくしゃみ、咳、鼻炎、発熱などの風邪のような症状のほか、角膜炎や結膜炎を引き起こします。子猫では症状が激しく、非常に死亡率の高い病気です。
猫カリシウイルス感染症 (3種) 猫カリシウイルスによる感染症で、はじめはくしゃみ、鼻水、発熱など風邪にいた症状が見られますが、症状が進むと舌・口の周囲の水疱、潰瘍が見られます。
猫汎白血球減少症 (3種) 猫ポルボウイルスによる感染症です。 血液中の白血球(免疫の細胞)が極端に少なくなる伝染病で、元気消失、食欲不振、高熱、嘔吐、下痢による脱水といった症状が見られます。経過が早く、特に子猫では死亡率が非常に高い病気です。

猫エイズ、猫白血病のワクチンについては接種条件がありますので、獣医師にご相談ください。

混合ワクチンの安全性について

ワクチンによって多少の違いがありますが、ワクチンによってアレルギーのような副作用が出る可能性は約0.5%以下と非常に低い確率です。ただし副作用はゼロではないので、ご家族もアレルギーについて正しく理解しておくことが重要です。
ワクチンによるアレルギーは大きく2つの症状に分かれます。
1つは命の危険性もある急性のアナフィラキシーショック、もう1つは顔がはれてしまったりする遅延型のアレルギー症状です。

アナフィラキシーショックはワクチンを打った直後に起こる症状です。
血圧が急降下し、呼吸や心臓が急に止まってしまったり、意識を失って倒れてしまったりします。これは非常に低い確率で起こるものですが、事前に把握することができません。当院では、このアナフィラキシーショックをできるだけ見逃さないように、接種後は待合室で休憩していただき、10分程で獣医師が体調を再確認するように配慮しております。

遅延型のアレルギーは、打った後から2-3時間以降で出てくることがあります。
お顔がパンパンに腫れたり、接種部位が腫れたり、嘔吐や発熱がみられることもあります。ダックスフントに多い症状で、5-6種ワクチンよりも8-9種ワクチンで多く起こることがわかっています。
ワクチン接種後1日は安静にし、ご家族の方が様子を見てあげてください。普段と違う症状が見られたら、すぐに病院にご連絡ください。

混合ワクチン接種はどうぶつの健康維持に必要なものです。接種の予定などお気軽にお問い合わせください。

狂犬病ワクチン

予防注射

狂犬病は、未だに世界中で毎年約60,000人もの死者を出している非常に怖い病気です。現在の日本にはない病気ですが、日本のように狂犬病がない清浄国は全世界でもかなり少数で、イギリス、オーストラリアなどの一部の国のみです。日本でも、ここまで清浄化するにはかなりの時間と労力が必要でした。

狂犬病は、狂犬病に感染した犬に咬まれて発病することが多いため、"犬"という文字が使われていますが、実際には犬だけでなく、人を含めたすべての哺乳類に感染するきわめて危険な感染症です。感染すると、神経細胞の中に潜伏し、最終的には脳に侵入します。発症すると神経症状を起こし、ほぼ100%死亡するとんでもなく怖い病気です。最強のウイルスとも言われています。

日本ではワクチン接種や動物検疫により、長期間にわたり発生がありません。しかしながら2006年には、フィリピンで日本人が犬に咬まれ感染し帰国後発症しました。狂犬病発生地域からの人や動物の往来が活発な今、いつ狂犬病が日本で発生してもおかしくないという状況です。

このような状況のため、犬に狂犬病ワクチンを年に一度接種することが『狂犬病予防法』という法律で国によって義務付けられているのです。

狂犬病ワクチンを打つと狂犬病になるというような噂も巷に流れていますが、狂犬病ワクチンは「不活化ワクチン」という感染力をなくしたウイルスを使ったものなので、感染することはありません。
ワクチン接種後のアレルギーは、混合ワクチンより少ないですが、稀に起こることがあるので、病院内でのチェックと家に帰ってからのチェックが必要です。
また、法律で市への登録が義務付けられているため、接種後は市の機関に手続きに行く必要があります。当院では、これらの手続きの代行も行っておりますので、近隣地域の方はご相談ください。