スタッフブログ

 

当院でのデンタルケアについて詳しく知りたい方はこちら「予防医療(歯周病、デンタルケア)」のページ:http://www.takei-amc.com/prevention/dental.html

 

2021年6月7日更新

今回のコラムは猫の肥満細胞腫についてです。

前回の犬の肥満細胞腫のコラムとの共通部分が多くありますので、以下のリンクもあわせてご覧ください。

どうぶつ医療コラム『犬の肥満細胞腫』

 

肥満細胞(=mast cell)とは

骨髄の造血幹細胞由来の細胞で、炎症や免疫反応に関わる細胞です。細胞質の顆粒内にヒスタミン、ヘパリン、セロトニンなどの多くの生理活性物質を含み、生体の防御機構を担っています。人で身近なものだと、花粉症などのアレルギー反応に関わっています。

図1:肥満細胞模式図

 

この細胞が腫瘍化したものが肥満細胞腫です。太っているからなるの?とよく聞かれますが、肥満とは全く関係がありません。

 

猫の肥満細胞腫は猫の腫瘍のうち約2-15%を占める腫瘍であり、以下の図のように分類されています。

 

図2:猫の肥満細胞腫の型別分類

 

より一般的なのは皮膚型です。近年の報告では、シャム、バーミーズ、メインクーン、ラグドール、ロシアンブルーなどが好発品種とされています。皮膚型のうち60%ほどを高分化型が占めており、良性の挙動をとります。低分化型の割合は約20~30%です。低分化型は細胞形態的には悪性ですが、良性の挙動を取るものも多いです。約10~20%で認められる非定型型は主に4歳以下のシャムに発生し、自然退縮することが多いと言われています。

 

イメージ

*高分化→成熟しており増殖しにくい=悪性度が低い

*低分化→未成熟で増殖しやすい=悪性度が高い

 

内蔵型脾臓型消化管型に分類され、発見時に高率に転移を起こしています。脾臓型では脾臓に発生し、肝臓への転移や肥満細胞血症(全身の血液に腫瘍細胞が見られる)が認められることが多いです。消化管型は主に小腸に発生し、広範囲に転移するなど悪性度が高く予後不良と考えられています。

図3:猫の指間部に発生した皮膚型肥満細胞腫(高分化型)

 

症状

皮膚型では基本的に皮膚腫瘤以外は無症状ということが多いです。悪性度の高い肥満細胞腫では、食欲不振、体重減少、嘔吐下痢、通過障害といった消化器症状、腫瘍随伴症候群としてアナフィラキシーショック、出血、消化管の潰瘍、貧血、胸水腹水などが認められることがあります。

 

診断

腫瘤の細胞診で診断が可能です。

図4:猫の皮膚肥満細胞腫の細胞(高分化型)

 

細胞診で診断がつかない場合、組織診断が必要です。血液検査や血液凝固検査、X線検査、CT 検査、超音波検査、骨髄生検などで転移の有無の確認、腫瘍のステージ分類を行います。また分子標的薬による治療を見越して、c-KIT遺伝子変異の検査を実施する場合もあります。

 

治療

共通して外科手術が第1選択の治療です。悪性度の高いもの、転移病変のあるものに対しては化学療法(プレドニゾロンやロムスチン、イマチニブ、トセラニブなどの分子標的薬)を状況に応じて組み合わせて行います。化学療法の効果に関しては未知の部分やばらつきが多く、今後の研究に注目が必要です。化学療法の副作用の管理も重要です。

 

皮膚型

犬では腫瘍の辺縁を広く切り取るのが良いとされていますが、猫ではどのくらい切り取ると再発しにくいかという明確な基準はなく、切除マージン(切り取る大きさ)は予後に関係ないという報告もあります。外科手術単独で良好な予後が得られることが多いです。

 

脾臓型

脾臓摘出などの治療で長期生存(中央生存期間132~865日)が認められているという報告があります。手術時に輸血や腫瘍随伴症候群の予防が必要になることが多いです。

 

消化管型

診断時点で既に広範囲に病変が拡がっており、外科手術が不適応となる場合が多いです。病変が消化管の一部に限局している場合は外科手術が可能ですが、一般的に術後の生存期間は短い(3ヶ月以内)です。近年、外科切除や化学療法により比較的長い生存(中央生存期間518日)が認められたという報告も出てきています。

 

腫瘍随伴症候群の治療

顆粒放出による症状を抑えるために、抗ヒスタミン薬、ステロイド剤、粘膜保護剤などを使用します。細胞診の検査時に必要な場合もあります。

 

院長からのひとこと

猫の肥満細胞腫は良性の挙動を取るものがほとんどですが、油断せず、早期診断早期治療を目指しましょう。悪性の挙動を取るものに関しても、治療法の研究は進んでいますので、一度ご相談ください。

2021年5月17日更新

 

多くの方に手にとって頂いた防災手帳ですが、この度、皆様のご意見等を反映してリニューアルしました。

 

 

 

くにニャンのかわいいイラストも増えました。

 

ご希望の方は病院受付にてお声がけください。

 

武井動物病院では他にもどうぶつのための防災アイテムを配布しています。

 

 

 

 

ぜひご活用ください。

 

2021年3月9日更新

犬の肥満細胞腫は日常の診療でよく遭遇する腫瘍で、皮膚腫瘍の約2割を占めていると言われています。また、皮膚だけでなく全身の様々な部位(皮下や内臓など)にも発生します。犬種や発生部位、グレードなどで差はありますが、基本的には転移性を持つ悪性腫瘍として扱います。

 

 

 

肥満細胞(=mast cell)とは

骨髄の造血幹細胞由来の細胞で、炎症や免疫反応に関わる細胞です。細胞質の顆粒内にヒスタミン、ヘパリン、セロトニンなどの多くの生理活性物質を含み、生体の防御機構を担っています。人で身近なものだと、花粉症などのアレルギー反応に関わっています。

 

 

この細胞が腫瘍化したものが肥満細胞腫です。太っているからなるの?とよく聞かれますが、肥満とは全く関係がありません。

 

肥満細胞腫の過去の報告を世界的に見ると、ボクサー、ボストンテリア、パグ、ゴールデンレトリーバー、ラブラドールレトリーバー、コッカースパニエル、シュナウザーなどが好発犬種とされています。2019年の東大の論文によると、日本で肥満細胞腫と診断された233例のうち多い犬種はラブラドールレトリーバー、雑種犬、パグだったそうです。日本では柴犬でも発生が多いと言われています。

 

 

症状

場所にもよりますが腫瘍が小さければ無症状のことが多いです。腫瘍が大きくなると一般的な腫瘍の症状(疼痛、食欲不振、体重減少など)が出てきます。肥満細胞腫に特徴的な症状は、前述の顆粒が刺激により放出されておこる腫瘍随伴症候群(皮膚の発赤、掻痒、浮腫、皮下出血などのダリエ徴候やアナフィラキシーショック、肺水腫、胃潰瘍など)です。

 

 

 

診断

細胞診が有用な検査です。細胞診とは、注射針でできものから少し細胞を採取し、顕微鏡で細胞の形態を診る検査です。通常、麻酔もいらず痛みもほとんどありません。肥満細胞腫は細胞内に特徴的な顆粒を持つため、細胞診で診断が可能です。治療方針や予後判定の参考になる所属リンパ節、脾臓肝臓への転移やc-KIT遺伝子変異の有無(悪性度の参考、分子標的薬の効果予測)についても細胞診標本である程度の診断が可能です。

 

 

これらを画像所見(エコー、レントゲン、CT)や肉眼所見、臨床症状などとともに総合的に判断し、腫瘍のステージ決めを行います。確定診断には手術で摘出後の病理組織診断が必要です。

 

治療

外科手術、放射線療法、化学療法を状況に応じて組み合わせて行います。また、腫瘍随伴症候群の治療も必要です。

 

外科手術

悪性度の高いものでは、腫瘍の周囲をかなり広く(3cm以上)深く(筋膜や筋肉など周囲の構造物ごと)切除しますので、腫瘍が小さかったとしても大きな手術になります。これだけ大きく切除する理由としては、以下の模式図のように、肥満細胞腫の細胞は顕微鏡で見ると肉眼で見えている部分よりも広範囲に存在するからです。初回の手術が根治の一番のチャンスですので、確実に切除を狙います。ただし浸潤性が強いものの場合、全て切除することが不可能な場合もあります。

 

 

 

 

一方、近年の研究では、悪性度の低いものでは腫瘍の周囲2cm程度の切除や肉眼病変の辺縁部切除でも良い成績が得られていることから、術前の診断をしっかり行い、できるだけ犬に負担を与えない、かつ根治を狙える手術計画を立てる必要があります。

 

また最近議論されているポイントは、腫瘍が転移したリンパ節に対する扱いです。これまでリンパ節摘出は診断目的とされていましたが、近年、転移のあるリンパ節を摘出した症例で治療成績の改善が認められたという報告が複数出ており、治療目的として推奨され始めています。

 

放射線療法

外科手術後に残った顕微鏡的病変に対しての放射線照射が有効と言われています。二次診療施設への紹介が必要ですので、放射線を治療計画に組み込むのであれば事前に連携を取っておく必要があります。

 

 

化学療法

悪性度が高い場合や外科手術で全ての細胞が切除できない場合、転移病変が存在する場合などに適用されます。ビンブラスチン、ロムスチン、プレドニゾロンといった従来の抗がん剤に加え、イマチニブ、トセラニブといった分子標的薬が使用可能です。治療前にc-KIT遺伝子変異の有無を調べておくと良いでしょう。

 

化学療法に関しては、副作用の管理も重要です。体調をみながらプロトコルを調整していきます。

 

腫瘍随伴症候群の治療

顆粒放出による症状を抑えるために、抗ヒスタミン薬、ステロイド剤、粘膜保護剤などを使用します。細胞診の検査時に必要な場合もあります。

 

 

 

予後は成長速度、発生部位、全身状態や局所再発の有無、腫瘍のステージ、組織学的グレード、遺伝子変異、転移の有無などによって様々です。

 

 

 

院長からのひとこと

肥満細胞腫は「偉大なる詐欺師」と言われる厄介な腫瘍です。様々な出現パターンを持ち、多発していても悪性度が低かったり、小さくて一見悪性度が低そうに見えても転移を起こし命に関わったりすることがありますので、「ただのイボかな」と見た目で判断して放置せず、一度精密検査をすることをお勧めします。

 

2021年2月16日更新

 

2021年1月17日で阪神・淡路大震災から26年です。今回は当時の動物救護の記録を振り返りながら、災害への備えを考えたいと思います。

 

 

大地震により多くの方が犠牲になり甚大な被害を受けました。被災動物(犬猫)は推定9300頭にのぼります。

 

被災直後から神戸市内の動物病院では、切り傷や骨折、打撲や火傷などにより外科治療を受けたり、嘔吐や下痢、食欲不振などにより内科治療を受けた動物が多くいました。

発災後約10日までの記録によると、犬での内科治療の数は、外科治療の約7倍と報告されており、ストレスに起因するものという推察がされています。

 

また、犬がナーバスになり噛みついた、地震による恐怖のために食事がとれず動物の症状が悪化した、余震におびえる犬が多かった等の報告もありました。

 

【出典:大地震の被災動物を救うために: 兵庫県南部地震動物救援本部活動の記録】

 

 

これらの記録から見えてくるのは、人間だけでなくどうぶつたちもストレスの影響を大きく受けるということです。

 

普段からどうぶつたちに接している飼い主の皆さんは、自分が疲れているとどうぶつが心配そうに寄り添ってくれるなど敏感に変化を感じとる姿をご覧になっているかと思います。

 

災害時のどうぶつたちのストレスを軽減するための備え

・どうぶつが食べ慣れたフードを多めにストックしておき、普段から消費・購入をくり返す(ローリング・ストック)。

ストレスを感じている時に食べ慣れないフードを与えられても、受け付けないことがあります。

食べ慣れているフードを最低1週間分、できれば1ヶ月分は備蓄しましょう。

 

 

・普段からクレート(ケージ)を部屋の中に置いておき、中で休めるようにしておく。

避難のために慣れない場所に行っても、クレートの中にいれば安心できます。ハウスが苦手な子はハウストレーニングに取り組みましょう。

 

 

・猫の場合は特に、クレートに目隠しのための布をかけると落ち着くことがあるので、クレートと一緒に準備しておく。

 

・クレート内でも遊べる安全なおもちゃを見つけておく。

災害時は動物も狭い場所で過ごすことが多くなります。そのような時に普段から使っているお気に入りのおもちゃがあれば、安心につながります。おもちゃに穴が空いていて、中にフードを入れて楽しめるものなどもあります。

 

武井動物病院ではどうぶつのための防災アイテムを配布しています。ぜひご活用ください。

 

 

 

2021年1月12日更新

眼が白くなってきた=白内障と考えていませんか?

今回は白内障についてお話しします。

 

 

白内障とは?

水晶体(網膜に光を集めるレンズ)の病的白濁のことで、通常不可逆性(元に戻らない)です。進行ともに視覚が失われ、緑内障や眼の炎症を引き起こすこともあります。発症年齢は生後すぐから高齢まで様々です。

 

 

 

 

原因は?

先天性、遺伝性、加齢性、中毒性、糖尿病などの代謝性、外傷性、栄養性など多岐に渡ります。

 

 

どんな症状?

眼(水晶体)が白くなります。進行すると視覚障害が出てきます。物にぶつかることが増えた、階段や暗いところを嫌がる、急に触るとびっくりするなどの症状は視力低下のサインです。白内障に続発し、水晶体誘発性ぶどう膜炎(LIU)を発症している場合は痛みや結膜の充血、前房フレア(白いもや)が発生することがあります。

 

 

診断はどうするの?

神経眼科学的検査ののち、瞳孔や前房、虹彩の状態を確認し、そのままでは水晶体の一部しか見えていないので、散瞳処置(瞳孔を開く目薬)をして、スリットランプにて水晶体混濁の程度を確認します。眼底検査や眼圧測定、超音波検査、網膜電図検査、全身のスクリーニング検査も行います。

 

白内障のステージは4段階あります(①→④の順で進行)。

 

初発白内障:水晶体の1割程度に混濁が見られる状態。視覚に影響はない。

イメージ→ちょっとだけ白い部分がある。

 

未熟白内障:水晶体の全体に混濁が及ぶが、完全ではなく、視覚は温存されている。

イメージ→全体がうっすら白い、ベンツマークみたいな線が見える。

 

成熟白内障:水晶体が完全に混濁、膨化し、視覚は失われている。

イメージ→全体が濃い白で奥が見えない。

 

④過熟白内障:水晶体皮質が溶けて(液化)縮小し、シワが見られる。視覚は失われている(少し回復していることもある)。

イメージ→成熟白内障の中に透明な部分が増える。いびつな感じ。

 

ステージが進行するにつれて、視力低下やLIU、続発性緑内障、網膜剥離などの合併症のリスクが増すので、早めの診断が重要です。

 

白内障以外でも眼は白くなります!

角膜炎やぶどう膜炎などの眼の炎症に伴って角膜や前房が白くなることがあります。また、白内障と紛らわしい疾患として、水晶体の中心の核が全体的に青白くなる核硬化症というもの(加齢性変化)があります。これは白内障と比較すると水晶体の混濁がなく、視覚も温存されているため、白内障と区別して考える必要があります。実際に混同されているケースをよく見かけます。

 

 

 

治療はどうするの?

根本的な治療は外科手術(水晶体超音波乳化吸引+眼内レンズ嚢内挿入)です。過去の報告では、内科的治療よりもかなり成績が良いです。ただし、手術適応の基準がいくつかあること、眼科専門病院など限られた施設でしか手術できないこと、高コストなどといったハードルがあります。当院で白内障と診断された場合、ご希望の方は眼科専門施設への紹介が可能ですのでご相談ください。

 

内科的治療としては、動物用医薬品として農水省の認可が下りているピレノキシン点眼薬(ライトクリーン)を使用し、定期的な診察、検査を行います。また補助的に、サプリメントとして研究報告の出ているポリフェノールなどを使用することもあります。内科的治療は白内障自体に対しては、進行を少し遅らせるだけで、完治させるものではありません。しかし白内障に続発してぶどう膜炎などの炎症が発生している場合は、抗炎症の点眼薬が有効ですので、状態に合わせて適切な投薬が必要です。

 

 

 

ひとこと

白内障は視覚の有無に関わる疾患ですので、早期診断治療が重要です。眼が白いなと感じたらすぐに診察を受けましょう。ただ、視覚を失ってしまった子でも、その他の感覚が発達し環境に適応して楽しく暮らしている子は多くいます。各々の状況に応じた最善の選択ができるようにお手伝いさせていただきます。

 

 

 

 

院長 田中 啓之

 

 

院長紹介ページはこちら→http://www.takei-amc.com/staff/inchou.htm

 

2020年12月17日更新

先日、最新の超音波診断装置「ARIETTA65V」を導入しました!

 

 

超音波検査はどうぶつへの負担が非常に少なく、外からは見えない内臓の詳しい形態が把握できるので、腫瘍の診断、胆嚢炎の診断、腎臓病の診断、結石の診断、胸水腹水の診断、胃腸炎の診断、心臓病の診断、肺の診断…etcと数え切れないくらい様々なケースに用いています。エコーの画像を見ながら内臓の針生検もしています。

 

 

 

今回導入した機械は多彩な機能を持ち、とても鮮明な画像を得ることができるので、より精度の高い検査が可能となりました。

 

 

 

 

 

これから当院の診断、治療の助けになってくれることを期待しています!

2020年11月11日更新

 

「この子はアジソン病です。」と言われてもあまりピンとこないかもしれません。

 

正式には、「副腎皮質機能低下症」と言う病気です。アジソン病は命に関わる病気ですが、症状が特徴的でないため発見が難しく、別の診断名(腎臓病や慢性腸症、心臓病など)がついて見逃されているケースもあります。

 

お薬で治療することにより改善し、うまく付き合っていくことのできる病気ですので、今回紹介していきます。

 

 

副腎とは?

解剖学的には以下の図のようになっています。

 

 

 

腎臓の近くにある小さな臓器で、ホルモンを分泌して身体のバランスを保ち、生命維持に重要な働きをしています。

 

アジソン病で問題となる副腎皮質球状帯束状帯網状帯からなり、

 

球状帯はミネラルコルチコイド(鉱質コルチコイド)、束状帯はグルココルチコイド(糖質コルチコイド)、網状帯はアンドロジェン(性ホルモン)を分泌しています。

 

 

原因は?

完全には解明されていませんが、自己免疫による(自分の免疫機構が自分の臓器を攻撃してしまう)副腎の萎縮が原因と言われています。

 

副腎の萎縮により、主にグルココルチコイドミネラルコルチコイドの不足が生じ、アジソン病を発症します。

 

 

どんな症状?

この症状をみつけたらアジソン病確定!という特徴的な症状はなく、元気がない、食欲がない、下痢や嘔吐をしている、震えている、脱水症状といった非特異的な症状を呈します。

 

やや特徴的なのは、ストレスに弱いということです。例えばホテルに預けると毎回下痢をする、旅行に行くと食欲が落ちる、病院の診察後に元気がなくなるなど、様々なパターンがあります。

 

アジソン病は、好不調の波を伴いながら徐々に進行していきます。放置していると、副腎クリーゼというショック状態に陥り、命を落とすこともあります。

 

どうやって診断するの?

上記の臨床症状から胃腸炎や腎臓病などの複数の主な鑑別診断を頭の中でリストアップし、検査で絞っていきます。その鑑別診断の一つとしてアジソン病をあげておくというのがまず第1のステップです。

 

これが難しいのです(腎臓病などに比べ、比較的頻度が低いにもかかわらず、極端に言えば調子が悪い子はみんなアジソン病の可能性がありますので。。)が、鑑別診断に入れておけるかどうかが一番大事です。

 

臨床症状や身体所見だけでは確定できないので、血液検査、血液化学検査や超音波検査、X線検査等を行い、診断を絞っていきます。

 

色々な所見がある中で、アジソン病の大きな診断所見としては3つです。

 

 

 

①血液化学検査により、低ナトリウム高カリウム高窒素血症が確認される

②超音波検査により副腎の萎縮が確認される

③内分泌検査(コルチゾール値の測定、ACTH刺激試験)により血中コルチゾールの低値が確認される

 

 

この3つが確認されれば、アジソン病を疑い、お薬をスタートします。

 

非定型アジソン病というものがあり、グルココルチコイドのみ分泌量が低下することにより、症状を呈します。この場合、低カリウムや高ナトリウム血症は出てきません。そのため、通常のアジソン病よりも見つけにくいです。

 

 

治療はどうするの?

通常のアジソン病の場合は、グルココルチコイドミネラルコルチコイドの補給をします。

 

 

当院で使用しているメインのお薬はグルココルチコイドとミネラルコルチコイドの両方の作用をもつ酢酸フルドロコルチゾンというお薬です。

 

お薬を1日2回飲んでもらい、症状や血液をモニタリングしながら投与量を調整していきます。

 

治療経過によっては他のグルココルチコイド製剤を加えることもあります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

非定型アジソン病の場合は、グルココルチコイドのみの補給を行います。

 

 

副腎クリーゼを起こしている場合は、輸液速攻型のグルココルチコイドの注射ミネラルコルチコイドで救命処置をします。

 

 

アジソン病は早期に診断され、薬で上手くコントロールできれば重症化することなく寿命を全うできます

 

ひとこと

「なんとなく元気ないなあ」からアジソン病が発見されることもあります。その場合はずっと悩んでいた症状がお薬で解決しますので、気になる症状があればいつでもご相談ください。

 

 

 

 

 

院長 田中 啓之

 

 

院長紹介ページはこちら→http://www.takei-amc.com/staff/inchou.html

 

2020年10月13日更新

9月は当院の「どうぶつ防災強化月間」です。

 

 

 

 

 

ペット健康防災手帳:病院受付で配布しています。

http://www.takei-amc.com/wp/news/bousai-notebook/

*「人とどうぶつのための備蓄品チェックシート」:病院受付で配布しています。

おもて面が人のための、うら面がどうぶつのためのチェックリストになっています。

HP「どうぶつの防災」http://www.takei-amc.com/prevention/bousai.html

2020年9月14日更新

 

短頭種って?

短頭種とは、頭の幅に比べ、鼻の長さの短い犬のグループです。

 

皆様がよくご存知なのは、ブルドッグ、フレンチブルドッグ、ボストンテリア、パグ、ペキニーズ、シーズーなど、鼻が潰れていてブーブー呼吸しているような子達だと思います。

 

実は隠れ短頭種としてチワワキャバリアもいます。

 

このような子達は遺伝的に呼吸器(鼻、軟口蓋、喉頭、気管など)に形態的な障害を持っていることが多く、それらを総称して「短頭種気道症候群(Brachycephalic Airway Syndrome : BAS)」と言います。その症状は若齢から見られることが多く、歳を重ねるごとに進行していく慢性疾患です。

 

 

どんな症状?

いびき睡眠時無呼吸ピーピー、ブーブー、ガーガーという呼吸(スターター、ストライダー)や、咳が出る息を吸う時に頑張っている(苦しそう)、運動(興奮)時にすぐ疲れる暑さに弱いなどといった症状です。

 

進行すると、チアノーゼや失神を起こし死亡する場合もあります。

 

また、多くの子で胃炎や食道炎も併発し、吐物の逆流による誤嚥性肺炎のリスクが高いです。

 

 

診断は?

一般的には、外貌呼吸状態の確認レントゲン撮影で行います。

 

また、エコー検査透視検査を行い、呼吸器の運動性を確認したり、内視鏡検査で確定診断をしたりする場合もあります。

 

 

治療は?

緩和的に内科治療(冷却や鎮静、酸素化、抗炎症治療、消化器症状の軽減)をすることがありますが、根本的な解決には主な異常に対する外科治療を行います。

 

1.外鼻孔狭窄

鼻の穴が狭くなって呼吸がしにくい状態です。皆様も軽く鼻をつまんで呼吸していただくと実感できると思います。

外鼻孔拡大術を実施します。

 

 

メスや生検用パンチを使用し、鼻孔の余分な組織を切除、整形して鼻孔を広げます。

 

 

2. 軟口蓋過長

軟口蓋(口腔内の上顎の部分で柔らかくなっているところ)が長すぎて、空気の通り道(下図の喉頭口)を塞いでしまう状態です。

軟口蓋切除術を実施します。

 

 

メッツェンや超音波メスを使用し、空気の通り道に覆いかぶさった軟部組織を切除します。

 

3. 喉頭虚脱

喉の入り口の運動障害により、呼吸や嚥下がうまくいかない状態です。

→軽度の場合は喉頭小嚢切除術を実施します。

外転して空気の通り道を邪魔している喉頭小嚢の粘膜を切除します。

 

 

→重度の場合は披裂軟骨側方化術などを実施することがあります。

披裂軟骨と輪状軟骨を糸で結んで引っ張り固定し、空気の通り道を拡げます。

 

 

4. 気管虚脱

気管の膜性壁がたるむことにより気管が潰れてしまう状態。

→上記1~3の治療を行い、改善がない場合には、気管を拡げる手術(気管外プロテーゼ、ステントなど)を実施します。それでも改善がなければ、気管切開術を行うこともあります。

 

 

 

 

短頭種気道症候群(BAS)は重度になると命に関わる疾患であり、進行とともに手術のリスクが大きく上昇します。「まだ元気だし様子を見て大丈夫かな?」、と言っている間に悪化してしまうことも考えられます。

 

若齢時の予防的手術により本症の進行を抑えることができるため、早期の診断が重要です。

 

当院の院長は、「犬・猫の呼吸器臨床研究会」に所属しており、より高度な治療が必要な場合は、呼吸器専門動物病院への紹介も可能です。気になる症状がありましたらお気軽にご相談ください。

 

院長 田中 啓之

 

 

院長紹介ページはこちら→http://www.takei-amc.com/staff/inchou.html

 

2020年8月4日更新