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どうぶつ医療コラム『アジソン病』

「この子はアジソン病です。」と言われてもあまりピンとこないかもしれません。

正式には、「副腎皮質機能低下症」と言う病気です。アジソン病は命に関わる病気ですが、症状が特徴的でないため発見が難しく、別の診断名(腎臓病や慢性腸症、心臓病など)がついて見逃されているケースもあります。

お薬で治療することにより改善し、うまく付き合っていくことのできる病気ですので、今回紹介していきます。

副腎とは?

解剖学的には以下の図のようになっています。

腎臓の近くにある小さな臓器で、ホルモンを分泌して身体のバランスを保ち、生命維持に重要な働きをしています。

アジソン病で問題となる副腎皮質球状帯束状帯網状帯からなり、

球状帯はミネラルコルチコイド(鉱質コルチコイド)、束状帯はグルココルチコイド(糖質コルチコイド)、網状帯はアンドロジェン(性ホルモン)を分泌しています。

原因は?

完全には解明されていませんが、自己免疫による(自分の免疫機構が自分の臓器を攻撃してしまう)副腎の萎縮が原因と言われています。

副腎の萎縮により、主にグルココルチコイドミネラルコルチコイドの不足が生じ、アジソン病を発症します。

どんな症状?

この症状をみつけたらアジソン病確定!という特徴的な症状はなく、元気がない、食欲がない、下痢や嘔吐をしている、震えている、脱水症状といった非特異的な症状を呈します。

やや特徴的なのは、ストレスに弱いということです。例えばホテルに預けると毎回下痢をする、旅行に行くと食欲が落ちる、病院の診察後に元気がなくなるなど、様々なパターンがあります。

アジソン病は、好不調の波を伴いながら徐々に進行していきます。放置していると、副腎クリーゼというショック状態に陥り、命を落とすこともあります。

どうやって診断するの?

上記の臨床症状から胃腸炎や腎臓病などの複数の主な鑑別診断を頭の中でリストアップし、検査で絞っていきます。その鑑別診断の一つとしてアジソン病をあげておくというのがまず第1のステップです。

これが難しいのです(腎臓病などに比べ、比較的頻度が低いにもかかわらず、極端に言えば調子が悪い子はみんなアジソン病の可能性がありますので。。)が、鑑別診断に入れておけるかどうかが一番大事です。

臨床症状や身体所見だけでは確定できないので、血液検査、血液化学検査や超音波検査、X線検査等を行い、診断を絞っていきます。

色々な所見がある中で、アジソン病の大きな診断所見としては3つです。

①血液化学検査により、低ナトリウム高カリウム高窒素血症が確認される

②超音波検査により副腎の萎縮が確認される

③内分泌検査(コルチゾール値の測定、ACTH刺激試験)により血中コルチゾールの低値が確認される

この3つが確認されれば、アジソン病を疑い、お薬をスタートします。

非定型アジソン病というものがあり、グルココルチコイドのみ分泌量が低下することにより、症状を呈します。この場合、低カリウムや高ナトリウム血症は出てきません。そのため、通常のアジソン病よりも見つけにくいです。

治療はどうするの?

通常のアジソン病の場合は、グルココルチコイドミネラルコルチコイドの補給をします。

当院で使用しているメインのお薬はグルココルチコイドとミネラルコルチコイドの両方の作用をもつ酢酸フルドロコルチゾンというお薬です。

お薬を1日2回飲んでもらい、症状や血液をモニタリングしながら投与量を調整していきます。

治療経過によっては他のグルココルチコイド製剤を加えることもあります。

非定型アジソン病の場合は、グルココルチコイドのみの補給を行います。

副腎クリーゼを起こしている場合は、輸液速攻型のグルココルチコイドの注射ミネラルコルチコイドで救命処置をします。

アジソン病は早期に診断され、薬で上手くコントロールできれば重症化することなく寿命を全うできます

ひとこと

「なんとなく元気ないなあ」からアジソン病が発見されることもあります。その場合はずっと悩んでいた症状がお薬で解決しますので、気になる症状があればいつでもご相談ください。

院長 田中 啓之

院長紹介ページはこちら→https://kunitachi-central-ah.com/about/staff/


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